沢 ゆき二
龍ヶ崎歴史民俗資料館、「沢ゆき」の歌碑 画像を見る
水草の下に そよめく愁の
影 きわまりなし
私はまるで牛久沼の水草のようだ。とすれば水草の下にそよめく影は、私のはてしない愁の姿ではないか。
無題の短詩である。沼の詩人の原点として、あるときは激しく、あるときはおののくような感性をもって、沼の神秘を水底から掬い上げながら歌いつづけた詩人澤ゆき独自の境地と作風をうかがわせる。
(歌碑 案内板より)
失いしものは しずかにして
忘れ得ぬものは はなる(離る)
あなたは戦いに散って、母のもとには再びもどらない。次男福次郎よ。面影は片時も去らないが、こうして幽明境を異にするとは。「君いづこ」と題する短詩である。嫁いだ後、夫を助け、家業に励みながら子女の教育に当るなかで、かかる悲しみにも打ちかって詩作をつづけた人間澤ゆきを偲ばせる。
(歌碑 案内板より)
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沢ゆきの短詩一
永遠の初恋
十九よ 十九を抱いた
なだらかな沼よ
あがきを止めた十九の命を沼へ沈め
人妻と云う変った私のムクロ≠ノ
それからの太陽は色あせた
生きながらの死を得て
凡てが仇な消滅に急ぐ時
屍を虚妄に懸け
仮装の私は嘘に生きた
こころが極みにゆきつくと
尾鰭が生えて 私はただよい
藻草をまとい 水脈の夢にききほける
人の行為の届けない私の場所に
水鳥がむらがり
発作にまさる鳴音の一つ一つを接ぎ合わせる
いじらしい屈託の姿
七十の近くで
今も私は
沼にあずけた 十九の孤独に
初恋する
沼から浮ぶ寂寥は
永遠に波打つ
恋である