「男はつらいよ・寅次郎真実一路」一
プロローグ
住井すゑが呼んだフーテンの寅。
そこには喜びや悲しみ、人の心を写す牛久沼があった。
牛久市城中町抱樸舎で住井すゑを中心とする学習会が開かれていた。そこに講師として訪れた山田洋次監督。
山田監督は牛久沼を見て、その周辺に広がる新興住宅地と沼のコントラストに興味を持ったという。そして、次の映画には遠距離通勤の会社員を登場させることを考えた。
撮影場所
つくば市(撮影当時は稲敷郡茎崎町)森の里団地 JR牛久駅からバスで約15分。牛久沼の北辺、東谷田川に面した閑静な住宅地。ここの住宅の魅力は、堤防が低く、景観を妨げていないので、沼面の住宅なら、家にいながら牛久沼の自然が堪能出来る。また、空気がきれいで、沼を見ながらの朝夕の散歩は、清々しい気分になるだろう。通勤さえ考えなければ水辺の理想的な団地である。
作品の概略
1984年12月公開松竹映画シリーズ第34作目
監督:山田洋次 脚本:山田洋次 朝間義隆
撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純
出演:渥美清 倍賞千恵子 大原麗子 米倉斉加年 その他レギュラー人
あらずし
上野の焼鳥屋で大手証券会社の課長富永(米倉斉加年)と隣り合わせ意気投合。牛久沼の彼の家に一夜の世話になる。翌朝、顔を合わせた富永の妻ふじ子(大原麗子)の美しさに寅次郎は言葉が出なかった。やがてその課長が突然蒸発する。おそらく仕事上のトラブルからだろうか。やがてふじ子と寅次郎の富永探しの旅が始まる。夫の故郷、鹿児島へ飛ぶ二人だが、ふじ子にとってそれは辛い旅であるが、寅次郎にとっては美しい人妻と一緒の楽しい旅だった。「ひょっとしてこのまま富永さんが帰らなければ、ふじ子は自分のものに…」と、悪い想像をする寅次郎。結局見つけることは出来ずにふじ子は牛久沼へ、寅次郎は柴又に戻るのだが、寅次郎のふじ子への恋心は一層深まるばかりだった。やがて富永は妻のもとに戻り、結果的に失恋した寅次郎は再び旅に出る。それはいつものワンパターンの展開だが、廃線となった線路をトコトコと歩く寅次郎の背中に、滑稽さと哀愁が漂っていた。