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「男はつらいよ・寅次郎真実一路」二 

牛久沼を中心とするシーンを通して、この映画の意図を考えてみました。

※以下、使用写真は映画「男はつらいよ・寅次郎真実一路」よりキャプチャー

牛久沼その一
 夜明け前の牛久沼の風景。人も、沼も、山も、総てがシーントと寝静まっている。
その静けさの中を、夜明けが待てないのだろうか、一羽の水鳥が一直線に泳いでいる。やがて鶏の朝を告げる鳴き声が森の里団地に響き渡る。

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早朝の牛久沼(東谷田川)茎崎側道橋付近

牛久沼畔・森の里団地
 森と沼に囲まれた新興住宅地森の里団地。
 朝を告げる鶏の鳴き声が聞こえてくる。やがて朝あけのひかりが住宅にも沼にも差し込み、沼は家々を写して輝いている。牛久沼のこの辺は、東谷田川と呼ばれていて、細長く延びた沼面は、沼というよりも、むしろ大川の様相をしている。
 
 早朝の6時、まだ薄暗い住宅地。一人二人、沼のほとりの道を急ぎ足で歩いている人の姿。早朝の出勤風景が始まろうとしている。
 自転車に乗って出勤する男の姿がある。富永である。富永は毎日、牛久駅まで3kmの道程を自転車に乗り、そして牛久駅から常磐線、山手線に乗り継ぎ、東京日本橋兜町まで、※約1時間45分かけて通勤している。俗にいう遠距離通勤者である。

※通勤時間は推定。映画のセリフの中では1時間30分となっているが、現実的には難しい。

 富永の家の中。
 寅次郎はやっと目がさめる。
「どこだ、どこだ」と寅次郎は身に覚えのない部屋をキョロキョロと見渡す。
実は、寅次郎は前夜、ふとしたことから友達になった証券会社のエリートサラリーマン富永と上野の焼鳥屋で深酔いをしていたのだった。
部屋中をうろうろしているうちに、洗濯物を干し終わった富永の妻ふじ子と顔をあわせ、その美しさに驚愕する。しかし寅次郎は誰だかわからない。
「あのう、よく眠れましたか?洗面所に歯ブラシとタオルを用意してありますが」と、ふじ子。
寅次郎は「はい、あのぅ。大変失礼ですけども、そちらはどこのどなたでしょうか?」と、問う。
「富永の家内のふじ子ですけど」
「富永さん?」
「夕べ主人と一緒に酔っ払ってお見えになったでしょう」
「ああ、九州の、、課長さんの奥さん」
「はい」
「あ、こりゃこりゃ大変失礼しました」
寅次郎は外の様子を見ながら、「奥さん、あのぉ、ここはどこあたりでししょうか?夕べ長〜い時間電車に乗った気がしますが」
「茨城県の牛久沼ですよ」
「牛久沼?はぁ〜、じゃ課長さん、ここから毎日東京へ行ってるんですか?」
「はい」
「疲れるだろうなぁ、じゃ、まだねてるんですね」
「7半に会議があるんで朝6時に出かけたんです」
「朝の6時?」
「毎日なんです。3年前までは都内の公団住宅にいたんですよ、主人がどうしても自分の家を欲しがって、それで、水や山のあるところがいいからって、結局こういうところに、なにしろ田舎育ちだから」
寅次郎は窓の外を見回して、「ここはいいところですね。静かで」
「ええ、子供にとってはね」
「お子様は?」
「もうとっくに学校へ行きました」
「ということは、奥さんと俺の二人っきり、あの、、」
寅次郎は一つ屋根の下にふじ子と二人っきりであることを知り、これはまずいと思ったのか、慌て富永の家を出てゆくのだが・・・。
柴又のトラ屋に戻った寅次郎は、ふじ子への想いが昂り、やがて恋煩いとなる。

 自分の家が欲しい。それも山や水のあるところがいいからと言う富永の希望。それは故郷の鹿児島の海に囲まれた田舎で育った郷愁に似た憧れ。その郷愁の行きつくところが牛久沼だった。
 富永は沼を見下ろす水辺の理想的な家を見つけたのだが、遠距離通勤という代償は大きかった。

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